

学生時代からの親友の、名字が変わることになった。
仕事から帰ってポストを開けたところ、チラシに混ざって
ずしりと少し手ごたえのある、きれいな封筒。
結婚式の招待状だ。
なぜか選ぶ服や好きな音楽が似ていて、
何より「カメラ好き」ということまで共通していて
仲良くなってそろそろ10年、の仲良しコンビ。
社会人になってからも、しょっちゅう会っては
最近撮った写真を見せ合うのがお互いにとって当たり前、になっていた。
おめでたい報告を聞いたのは、いつものように
仕事を早めに切り上げて、ふたりで飲みに出かけた日のこと。
いつになく学生時代の思い出話で盛り上がり、
奮発したシャンパンの後押しもあって“独身旅行”に行こう!という流れになった。
行き先は、卒業旅行で訪れた北海道。
「“独身卒業”旅行って感じ? もう一度行ってみますか~」
目指すは、あのときふたりで駆け抜けた、一筋の直線ルート。
空港に降り立つと、予想を裏切り、思った以上の暖かさ。
本州と違うのは、肌をなでる風の軽やかさだ。
梅雨のない北海道はこの時期、空気がカラリとしていて清涼感に満ちている。
出発の朝、6月の曇天に旅のテンションが下がりまくりだった私たちを、
能天気なほど鮮やかな青空が迎えてくれた。
旅先でもおしゃれにこだわりたい私たちは、
空のブルーにも、新緑のグリーンにも映える、真っ白なコンパクトカーをレンタル。
さあ、日本海沿いにある60km以上信号のない直線道路へ!
ときおりすれ違うトラック以外は、左に日本海、右に広い平原が広がっているばかり。
あまりに広大で、穏やかで、制限速度いっぱいに飛ばしているのに、
ほとんどスピードが出ていないような感覚に陥る。
通ったことのあるはずのこの道だけど、不思議とふたりとも記憶にない。
思えば学生時代の卒業旅行では、
前夜の痛飲がたたってせっかくのドライブ中に爆睡していたり、
彼氏と電話しちゃってたり、おしゃべりに夢中になったりしてたし、無理もないかぁ……。
突然、カーブの先に雄大な山がひとつ、姿を現す。
日本海にぷかりと浮かぶように見える美しい円すい形は、離島の山だ。
路肩にゆっくりと車を寄せ、野花が揺れ咲く草原へと足を踏み入れる。
足首をなでる草の冷たい感触と、踏みしめた土のやわらかさ。
どちらからともなく、学生時代から愛用しているカメラを取り出す。
いつもは景色を撮ってばかりの私たちだけど、今回は違う。
車のボンネットを三脚代わりにして、
“海に浮かぶ山”をバックに、ふたりのピースサイン。
そういえば、学祭のときの写真も、キャンプに行ったときの写真も、
この子と並んで、ピースサインしてたっけ。
……ああ、学生時代に戻ったみたい。
「結婚式で、スピーチお願いしていい? とびっきり泣けるやつ」と切り出した彼女に
もちろん、とうなずきながら私は言う。
「私のときは、とびっきり笑えるやつね」
その半年後、まさか「笑えるスピーチ」を本当にお願いすることになるとは
このときふたりともみじんも思っていなかった。
……それはまた、別のお話。


