

「かっこいいな~」。
小学生になったばかりの息子がうっとりと見つめる先には、
ビシッと制服を着こなし、キビキビと働くドアマンの姿があった。
今日は15年ぶりの同窓会。
最初はひとりで来ようかと考えていたのだが、
せっかくの機会なので、ホテルに訪れることなどあまりない息子を連れてきてみた。
案の定、あらゆることが新鮮に目に映る様子。
「ねえ、あの人は何をしているの?」「お料理作る人は、どこにいるの?」
会場についてからも、もてなしてくれるスタッフを見ては、あれこれと聞いてくる。
久しぶりに会った友人たちの中にもこども連れが何人かいて、
ひとりがこの夏、ホテルで開催されていた
“こどものお仕事体験”に親子で参加した話をしてくれた。
普段、おとなの話になどまったく耳を傾けない息子が、熱心に聞いている。
そういえば、この友人たちと過ごしていたころの私たちはまだ学生で、何者でもなかった。
就職活動の時期には、しょっちゅう友人の家に集まって、
お酒の入ったグラスを片手に、真剣に将来について語り合ったりしたっけ。
希望の企業に入った子も、実家の家業に就いた子も、留学した子も、
あれからずいぶん時間が経った今ではまた状況は変わっているようで、
違う職業に就いていたり、子育てに奮闘していたり、
自分で事業を興したり……とさまざま。
まさか15年後、みんながこんな風にたくましくそれぞれの道で生きているとは、
学生時代のあの時には想像もしていなかった。
ひとしきり盛り上がった同窓会の後、二次会へと移動する際にも、
息子はじっとロビースタッフを見つめていた。
「ねえねえ、あの制服の人にはどうやったらなれるの?」
今は想像がつかないけれど、この子もいつか社会人になるんだよなぁ……。
まだ、それこそ15年ほど経たなければどうなるかはわからないけれど、
無限の可能性が待っているように感じてワクワクする。
「どうやったらなれるかなぁ?
今度、“お仕事体験”をやってたら、一緒に来て聞いてみようね」。
うん、とうなずく笑顔を確認してから、手をつなぎ、ホテルを出る。
外は、午後の日差しがまぶしかった。
すっかりおとなになった友人たちに囲まれながら、
息子とともに、次の場所へと歩いた。


