FIGURE 100
2016.07.08【Figure.33】
ホテルが誇るゲストルームの名品ギャラリー
茶道の美意識を宿す竹工芸
コンテンポラリーなつくりのゲストルームを、“和”と“洋”が交じりあう、こだわりの調度品で設え、お客さまにお寛ぎいただきたい。そんな想いで、クールなカップ&ソーサーや、アーティスティックな南部鉄器をご紹介してきましたが、次に探し求めたのが、水回りのアイテム。出会ったのが京都の竹細工でした。古くから茶道の中心地である京都に、自ら竹林を育て、デザイン図を引き、伝統工芸の職人がつくり上げるという、竹工芸のスペシャリストがいると聞き及んだのです。
日本人に馴染み深い素材でありながら、洗練された雰囲気も併せ持つのが竹の持ち味。求めているテーマにきっと合うに違いない、そう閃き、さっそく洗面台にグラスやタオルを置く台として、オリジナルの竹工芸の製作を相談してみました。請け負ってくれたのは、高野竹工です。竹工芸のほか、指物師、漆職人、蒔絵職人までも有する少数精鋭の工房で、竹という素材に現代的なアプローチで迫った、様々なグッドデザインを世に送り出しています。
出来上がったのは、細い竹を幾つも繋ぎあわせた美しい形の洗面台でした。こだわりを伺ってみると、「水回りということもあり、腐食や色あせを防止するコーティング剤はいろいろ試しました。竹の持つ素材感を消さないよう、テカリの出ないマットな質感に仕上がるものを選んでいます」。計算し尽くされたかのようなサイズやデザインについては、「茶道にも通じる黄金比を採用しています。もともと茶筅(ちゃせん)や柄杓(ひしゃく)、茶杓(ちゃしゃく)など、茶道の道具には竹を用いたものが多い。竹工芸の原点は茶道具だといえます。主となる茶道具は、すべて寸法が定められており、配置すらも決まっているのです。見て美しく、空間にしっくりと馴染むバランス。その黄金比を用いて、サイズ感、厚みなどを導き出し、今回のホテルの水回りに映えるデザインに落とし込んでいます」。
日本人の琴線に触れる、美しい竹細工がひっそりと客室でお待ちしています。